<< 小泉純一郎先生に捧ぐ (2001.04.10掲載) | main | 天国にも地獄にもなりえる黄金週間 (2001.05.09掲載) >>

2007/03/22 木

良い子は絶対に真似しないように

【みゃ長の独り言】

2007年3月17日の早朝、日本平に着いた。
まだ、ほんのり暗く、霧雨も降っている、寒い寒い朝であった。
とにかく着いたら横になって寝る。
そして道中での疲れを癒し、万全の状態で試合に挑むのである。
やはり車で座って寝るのと、体を横にして眠るのとでは、明らかに疲れのとれ具合が違うのである。
俺がアウェー側ゲートに着いた時には、既に20名程のメンバーが、霧雨が降る中、身を寄せ合い、選手横断幕に包まりながら寝ていた。
それはまさしく、新聞紙に包まれて眠るハムスターのようであった。
「俺も寝よう、こんな雨、たいした事ない」
と選手横断幕を2枚重ね、布団代わりにして横になった。
余程疲れてたのか、すぐ眠りに落ちた。
が、どのくらい寝たか分からないけどいつの間にか、「休息」から「忍耐」にシフトチェンジしていた俺の身体。
雨が本降りになってきたのだ。
横断幕をびっしょりと濡らした雨が、俺の身体にまで染みて来やがった。
艱難辛苦に耐えろ!
耐え難きに耐えろ!
雨の中、立ちんぼで耐えるより、ゴロッと横になって耐える方が良い!……訳無い、無理っ!
既に雨は土砂降り、とても寝れる状態では無かった。
俺は震えながら立ち上がった。
さすがに、この土砂降りの中、もう誰も寝てられないだろうと思い横を見ると、まだ二人ほど寝ているではないか。
雨の中、びっしょりと濡れた横断幕の下で、微動だにしないで横たわる体。
まるで死体のようだ。
しかし、それはそれで、ここまでくると見事だ、美しささえかもし出している。
もう少し そっとしておこう。(どういう家庭環境なんだか・・・)

さてさて、ここまでの戦いを思い出してみる。
柏が良かったのか、磐田が悪かったのか分からないが快勝した開幕戦。
そして、次は気を良くしてアウェーの地に挑んだが、そいつが油断を招いたような雨の広島。
PKぶち込んでりゃ勝ってたが、結果は引き分け。
まぁ、去年だったら負けてたと自分に言い聞かせた試合だった。
また広島では、こんなことがあった。
「息子の横断幕を作ったので、空いてるスペースにでも張っておくりゃなまし」
と一匹の猿が俺達のところにやってきた。
アウェーでは、選手の親や親戚から選手横断幕を預かることが多々あり、またそれだと思いました。
拡げると『がんばれ石崎』と描かれていた。
・・・あっ、あなたは、もしや!!
いくつになっても親は親、子供は子供なのである。

そして、今回の日本平。
この清水戦は、勝たなきゃならんのだ。
ここで勝たないと、アウェーではなかなか勝てないという去年同様の展開になりかねない。
そういった意味でも、大事な試合だと俺は思っていた。
そんな俺の勝ちたいという気持ちが伝わったのか、開門1時間前に雨があがった。
さぁ、いこうか柏バカ。

今日の試合、何やら清水側では、ホームサポーターに黄色い柏餅を配り、それを皆で食うという古典的なげんかつぎをしていた。
ならばウチらも対抗して、オレンジ色の大福を用意しようと思い、朱色の食紅を大福に塗る事を考えた。
試しに一個作ってみた。
うーむ、見るからにおぞましく、身体にもリスクが大きそうな大福になってしまった。しかも、マズイ!
その上、日本平にやってくる柏サポーター用に何百個も作るには、とてつもなく大金がかかるので、止めにしたのでありました。
怖いでしょ僕達。良い子は絶対に真似しないように!

代わりのネタとして、白ダンマクに清水のGM久米さんを捩り、『柏餅VSマス久米ロン』と描き、二階席から垂らした。
「君達、庶民のおやつは柏餅、僕達ちょっとセレブなマスクメロン」
と叫びながら垂らしたのでありました。
しかし今のご時世、マスクメロンも庶民の食べ物であろうが・・・。
マスクメロン=金持ちという発想、ここに俺等の生活のレベルの低さが伺えた。

さてさて試合前に恒例のミーティングを行った。
試合に臨む俺たちの、魂の活性剤である。
「おい、お前ら!点取ったら二階席だろうが構わず前になだれ出ろ」
とリーダーの吾郎ちゃんが言う。
「押忍!」
と全員が揃って答える。
「ビビらず前に出ろ、柵を越えろ」
「押忍!」
実に気持ち良いものであるが、皆分かって返事しているのだろうか?皆、目が血走っている。
「こりゃ、今日点入ったら、二階席から落ちる奴出るよ」
と俺が吾郎ちゃんに言うと、
「落ちたらてめえら、『タミフル飲んでまーす』と言え」
「押忍!」
「無性にダイブしたくなったと言え」
「押忍!」
「もう飲んでんだろ、お前等?」
「押忍!」
完全に吾郎ちゃんの催眠術に掛かってしまった。
これは殺人幇助と言う罪になるのではなかろうか。
まあ、二階席から落ちれば死ぬかもしれない。
でも、それはイコール柏が点がとったということであり、結果、柏が勝つのだ。
正に天国と地獄。

カルト集団のミサが終わると、いよいよ試合が始まる。
今日もオレンジ色が揃って踊っている。
いつみても思う・・・俺達にはできないと・・・。
前半0-0。
清水のDFの、でかい事でかい事。
うちも中々点が入らない。
パスワークはうちの方が断然良いぜ、必ずチャンスは来る。
クロスバーにも助けられた。
フランサは常に二人掛かりでマークだ。サシで勝負しやがれ!
そんな中、後半に突入。
フランサの魔法のパスからチュンソンがシュート。ゴールを外れる。
その後、実のCKからチュンソンが頭でゴール。
ついに柏がゴールだ。
その時だ・・・。
催眠術の掛かったメンバーが一斉に前になだれ出た。
二階席の柵を跨ぎ、半身を乗り出し、チュンソンコール。
「イ・チュンソン!イ・チュンソン!」
そろそろ、ここで吾郎ちゃんが催眠術を解く時が来た。
携帯用ポットの中の熱々の熱湯を、前になだれ出たメンバーにかけるのであった。
「笑いと危険は常に背中合わせ」
と言いながら、容赦なく熱湯をかけた。
バッシャー!
「あっちぃーッ」
と言いながら、のたうち回るメンバー達。
完全に催眠術が解かれたらしい。
うちらのメンバーも、熱湯をかけ慣れたもので、
「殺す気かーッ!」
と叫びながら、柵の内側に倒れこむ、正に芸人の域であった。
これぞゴール裏の名人芸であった、見事。
と、皆が柵の内側に倒れこむ中、二階席の柵の外側から「あっちィーッ」と叫びながら這い上がってきたメンバーがいた。
つまりは、こいつは半身どころか、全身を柵の外側に乗り出し、手すりにつかまった体勢で体が二階席の外側の空中に出ていたことになる。
熱湯の熱さで手を離していたら、完全に二階席から下に落ちていた。
なんとか熱さに耐え、必死で手すりにつかまり、這い上がってきたのだった。
正に、死の淵からの生還であった。
そいつは、俺と吾郎ちゃんを鬼畜生を見るような目でにらんだ。
後で聞いたところ、こいつは点が入ったと同時に、二階席の柵の外にぶら下がり、懸垂のパフォーマンスをしていたそうだ。
正に命を懸けた大技である。
そのパフォーマンスの最中に、いきなり熱湯がかかったのであった。
「これ、落ちたら殺人だよね?」
と吾郎ちゃんに俺は呟いた。
「うん、間違いなく殺人だ」
と吾郎ちゃん。
死人も出さず、殺人犯も出さず、無事試合は終わった。俺達は勝った。
これを死闘と呼ばず、何と呼ぶのだ。
怖いでしょ僕達。良い子は絶対に真似しないように!

まだまだ3節、先は長い。
これからも命を懸けて、いいや(他のメンバーに)懸けさせて進んでいく俺達だ。