●ドラゴンへの道
【みゃ長の独り言】
川崎戦が終了し、後片付けやなんやらで、結局、家に帰ったのは深夜のAM2:00。
いくら遅くなっても、この人は俺の帰りを寝ないで待っている。
「ただいま」と、俺はすまなそうに言う。
「お帰り。今日、勝ったね」
そう言いながら、お茶を一杯出してくれる。
実にいい女房である。
俺を自由にしてくれる。
世間という海のなかを、自由に泳がしてくれるのだ、そう、あの龍のごとく。
全長18m、胴回り1m、頭部だけでも1.5mもある巨大な龍。
そいつに出会ったとき、俺は全身に電流がはしった。
そして思った。
あれを日立台で泳がしたい!
俺が、その龍に出会ったのは、夏の始まりの頃であった。
太陽メンバーの中に○○寺の檀家がいるのだが、そこの地元の祭りがあるので手伝って欲しいとの要望があった。
何を手伝うのかも分からず、当日、祭りの会場に来てみてビックリ。
そこで出会ったのが、今回の龍である。
祭りで行う龍の舞を手伝って欲しいというのである。
聞いた話では、その龍の制作費は、なんと総額170万円。
バッテリーを頭の部分に搭載し、目が光る仕掛けになっているのだ。
見事である、おいし過ぎる。
ぜひ、日立台で泳がせたい。
でも無理であろう。
なにせ、その龍はN仏教会の所有物ということ。
年一度行われる、地元祭りの日以外は、○○寺の蔵で眠っているというのである。
「なぁ、年に一度じゃ龍がかわいそうでしょう・・・。泳ぎたい、泳ぎたいと龍が言ってるよ」
俺はあきらめきれず、○○寺の檀家でもある太陽メンバーのネンイチ君(仮名)に言うと、胸をたたき「わかった、俺にまかせろ」と心強い一言。
ネンイチ君は○○寺の若き檀家のひとり。
まぁ、ネンイチ君のお父さんが檀家集の長ということもあり、話は予想以上に良好に進んでいった。
なんと、2日後にはOKがでた。
ただし、扱いにはくれぐれも気をつけてくれとの注意もついてきた。
まぁ、当然だな。
その場では大丈夫と言ったが、自慢じゃないが、今までに大ネタの道具が無事だったことが一度もない。
今年にかぎっていえば、まず開幕戦で用意した花輪。足の部分がポッキリと折れた。
次に獅子舞。耳がとれ、アゴが外れて口が閉じない。
七夕飾りを借りたときも、短冊から葉っぱまで、どうすりゃ取れるのか、終わったときには竹箒になっていた。
いつも現場では興奮して、勢い余って壊してしまうのだ。
でも、今回は170万円もする龍。
しかも、その巨大な姿なため、狭い日立台のゴール裏では、押し合い、もみ合いで壊れてしまう可能が大である。
そう考え、ちょっと弱気になる俺。
そうだ、もし龍が壊れてしまったら、俺はその龍に乗って遠くに泳いでいけばいい。
そうだよ、そうなんだよ。
無理やり現実逃避して、俺は龍を川崎戦に持っていくことにした。
試合前日、○○寺に龍を借りにいった。
その巨大な龍は、頭部、胴体、尻尾と3つのパーツに分解することができる。
それぞれをパーツを車1台づつにわけ、計3台の車に積んでいくのだ。
作業開始から1時間かかって、ようやく積み終える。
その様子を見ていた○○寺の住職さんが、笑顔でささやいた。
「これ、当然、テレビなんかには映らないだろうね。前にも言ったけど、N仏教会の持ち物だから、無断で全国放送されちゃうのはまずいから」
俺は固まった。
無理だ、テレビに映らないなんて絶対無理に決まってる・・・と思いながらも、俺は大きく深呼吸して
「大丈夫・・・」
と言ったあとに、誰にも聞こえないような小さな声で
「なわけありません」
とささやいた。
川崎戦はスカパーで生放送であった。
まぁ、後はテレビに映らないことを祈ろう。
そして、試合当日。
試合開始10分前のサポーターズタイムで、いつものようにお立ち台に立つ俺。
俺の「みんなー、驚けー」の合図とともに、『ドラゴンボール』のオープニングテーマ曲にのり、ゴール裏の端から龍が登場。
その瞬間、スタジアム中に歓声があがる。
そのまま龍は、ゴール裏の中央に向かって気持ちよさそうに泳ぐ。
今度は『日本昔ばなし』のオープニングテーマ曲に変わり、場内に笑いが広がる。
中央までやってくると、俺の周りを旋回。
そこから、皆で柏バカ一代を歌う。
そんな光景が、全国のお茶の間に放送されましたとさ。
そうだよね、これだけやってテレビに映らないわけないよね。
まぁ、スタジアムも盛り上がったし、試合にも勝ったから、いいや。
翌日、○○寺に龍を返しにいった。
「いやぁ、昨日は勝ってよかったね」
住職はテレビで試合をご覧になられたようです。
でも、何もなかったように「また、使いなよ」とやさしく言ってくれました。
さすが、仏の道に生きる方は、心が広いのであります。
これで、シーズン始めに石崎監督が目標に掲げていた、勝ち点56まであと「10」にせまった。
えっ!
川崎戦が終了し、後片付けやなんやらで、結局、家に帰ったのは深夜のAM2:00。
いくら遅くなっても、この人は俺の帰りを寝ないで待っている。
「ただいま」と、俺はすまなそうに言う。
「お帰り。今日、勝ったね」
そう言いながら、お茶を一杯出してくれる。
実にいい女房である。
俺を自由にしてくれる。
世間という海のなかを、自由に泳がしてくれるのだ、そう、あの龍のごとく。
全長18m、胴回り1m、頭部だけでも1.5mもある巨大な龍。
そいつに出会ったとき、俺は全身に電流がはしった。
そして思った。
あれを日立台で泳がしたい!
俺が、その龍に出会ったのは、夏の始まりの頃であった。
太陽メンバーの中に○○寺の檀家がいるのだが、そこの地元の祭りがあるので手伝って欲しいとの要望があった。
何を手伝うのかも分からず、当日、祭りの会場に来てみてビックリ。
そこで出会ったのが、今回の龍である。
祭りで行う龍の舞を手伝って欲しいというのである。
聞いた話では、その龍の制作費は、なんと総額170万円。
バッテリーを頭の部分に搭載し、目が光る仕掛けになっているのだ。
見事である、おいし過ぎる。
ぜひ、日立台で泳がせたい。
でも無理であろう。
なにせ、その龍はN仏教会の所有物ということ。
年一度行われる、地元祭りの日以外は、○○寺の蔵で眠っているというのである。
「なぁ、年に一度じゃ龍がかわいそうでしょう・・・。泳ぎたい、泳ぎたいと龍が言ってるよ」
俺はあきらめきれず、○○寺の檀家でもある太陽メンバーのネンイチ君(仮名)に言うと、胸をたたき「わかった、俺にまかせろ」と心強い一言。
ネンイチ君は○○寺の若き檀家のひとり。
まぁ、ネンイチ君のお父さんが檀家集の長ということもあり、話は予想以上に良好に進んでいった。
なんと、2日後にはOKがでた。
ただし、扱いにはくれぐれも気をつけてくれとの注意もついてきた。
まぁ、当然だな。
その場では大丈夫と言ったが、自慢じゃないが、今までに大ネタの道具が無事だったことが一度もない。
今年にかぎっていえば、まず開幕戦で用意した花輪。足の部分がポッキリと折れた。
次に獅子舞。耳がとれ、アゴが外れて口が閉じない。
七夕飾りを借りたときも、短冊から葉っぱまで、どうすりゃ取れるのか、終わったときには竹箒になっていた。
いつも現場では興奮して、勢い余って壊してしまうのだ。
でも、今回は170万円もする龍。
しかも、その巨大な姿なため、狭い日立台のゴール裏では、押し合い、もみ合いで壊れてしまう可能が大である。
そう考え、ちょっと弱気になる俺。
そうだ、もし龍が壊れてしまったら、俺はその龍に乗って遠くに泳いでいけばいい。
そうだよ、そうなんだよ。
無理やり現実逃避して、俺は龍を川崎戦に持っていくことにした。
試合前日、○○寺に龍を借りにいった。
その巨大な龍は、頭部、胴体、尻尾と3つのパーツに分解することができる。
それぞれをパーツを車1台づつにわけ、計3台の車に積んでいくのだ。
作業開始から1時間かかって、ようやく積み終える。
その様子を見ていた○○寺の住職さんが、笑顔でささやいた。
「これ、当然、テレビなんかには映らないだろうね。前にも言ったけど、N仏教会の持ち物だから、無断で全国放送されちゃうのはまずいから」
俺は固まった。
無理だ、テレビに映らないなんて絶対無理に決まってる・・・と思いながらも、俺は大きく深呼吸して
「大丈夫・・・」
と言ったあとに、誰にも聞こえないような小さな声で
「なわけありません」
とささやいた。
川崎戦はスカパーで生放送であった。
まぁ、後はテレビに映らないことを祈ろう。
そして、試合当日。
試合開始10分前のサポーターズタイムで、いつものようにお立ち台に立つ俺。
俺の「みんなー、驚けー」の合図とともに、『ドラゴンボール』のオープニングテーマ曲にのり、ゴール裏の端から龍が登場。
その瞬間、スタジアム中に歓声があがる。
そのまま龍は、ゴール裏の中央に向かって気持ちよさそうに泳ぐ。
今度は『日本昔ばなし』のオープニングテーマ曲に変わり、場内に笑いが広がる。
中央までやってくると、俺の周りを旋回。
そこから、皆で柏バカ一代を歌う。
そんな光景が、全国のお茶の間に放送されましたとさ。
そうだよね、これだけやってテレビに映らないわけないよね。
まぁ、スタジアムも盛り上がったし、試合にも勝ったから、いいや。
翌日、○○寺に龍を返しにいった。
「いやぁ、昨日は勝ってよかったね」
住職はテレビで試合をご覧になられたようです。
でも、何もなかったように「また、使いなよ」とやさしく言ってくれました。
さすが、仏の道に生きる方は、心が広いのであります。
これで、シーズン始めに石崎監督が目標に掲げていた、勝ち点56まであと「10」にせまった。
えっ!